薬と手当て

2022年12月8日更新

  • 公式ブログ

まだ私が学生だった頃、講師をされていた薬剤師の先生に言われた言葉があります。

「薬を服用する際には、その副作用についての説明書きを必ず全て読みなさい」

毎回、情熱あふれる講義をされていたこの先生が何を言わんとしているのか、当時の私には解せませんでした。

時は過ぎ、その言葉を思い出したのは、自分ではなく子どもに薬を服用させるか否かを判断する時でした。

「何も知らず、何も考えず、何も感じ取らずに、それによって人間の体を無碍に扱ってはならない」「自分が行う事にしっかりと責任を持ちなさい」 薬がどれほど大きな影響を体に与えるものなのか、考えさせられました。

 それに比べて、ご家庭で「お手当て」を行う事はとても些細な事なのですが、これができている事で家庭内の不安やわだかまりがどれだけ少なくなるのか、互いの関係性がどれほどに心の通いあうものになるのか、これは経験している人にとっては火を見るよりも明らかなのです。そこに理論や科学的根拠は必要ありません。なぜなら、自らの経験を通してその結果は立証されているからです。

 この事について統計をとって分析したり、科学的な解析により数値化し、客観性を持たせる手段もあるとは思いますが、そこまでしないと信用できない人に「お手当て」の意味を説得する事は何かとても虚しい気持ちになります。

 現代のように様々な情報が錯綜する中で、それに振り回されているという事に気がつき、「自分の感覚や考えを大切にしていきたい」という人が、確実に増えてきているというのもまた自然な流れであると感じています。  

「薬」と「お手当て」 この両者をどのように利用していくのか。あらかじめ考慮すべきことは、圧倒的に薬の方が作用が強いということ。薬を使う時は「どんな結果になっても自分自身で全てを受け止める」という覚悟が求められます。これは大袈裟に聞こえるかもしれませんが、体が自らの力で症状を回復させ、体を整えていくという自然な反応を奪う事は、それ相応の代償を伴う事でもあるのです。

コメントする

ニックネームとコメントを入力して送信して下さい。

内容をご確認の上、送信してください。