姿勢という個性

2024年9月25日更新

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ストレートネック、猫背、巻き肩、反り腰、骨盤の歪みなどに対して悪い姿勢のイメージをもつ方が多いようです。ですが、本当にこれらは悪いものなのでしょうか。

私が国家資格を取得してまもない頃、真っ先に身につけたいと考えたのが、骨盤調整、脊椎矯正と呼ばれる姿勢を矯正する治療技術でした。それはシンプルに「骨格を左右対称にして、姿勢を真っ直ぐにすることは身体に良いこと」という理論・思想に基づくもの。身体の不調や痛みを改善する為に、これらの技術を身につけることが、いわゆる「悪い姿勢」に対する最善のアプローチであるという考え方に疑いの余地はありませんでした。

この技術を身につければ、多くの方のお役に立てると信じて修得し、実際に臨床で実践していました。その効果は、一般の方だけではなくスポーツの現場でも、即時に症状が改善するようなこともあり、喜ばれることも多く、私自身も治療家としての存在意義を見つけたような気がしていました。ただ結果的には、その当時の治療技術を封印し、今の施術体系へと向かうことになります。

『姿勢には個性があり、その姿勢を意図的に矯正することは、望まぬ弊害を生ずる要因となる』

このことに気が付くきっかけとなったのは、腰痛に苦しんだ私自身の体験にあります。中学生の頃、病院で告げられた「腰椎椎間板ヘルニア」という診断名。痛みの原因はこれであり、それは姿勢の歪みが原因であると。

奇しくもその4年後、運動中に負った足趾の怪我をきっかけに再びMRI検査をすると、別の部位に新たな椎間板ヘルニアがみつかりました。(今思い返せば、足の負傷に何故、腰の検査を?とも思いますが)この時、腰は痛くありませんでした。2カ所にある腰椎椎間板ヘルニアと痛みのない自分の腰。

この辻褄の合わない現象が、姿勢に対する見方を大きく変えてくれました。

『歪みや変形が、痛む原因の全てではない』

という事実。

たとえ苦痛を感じるような姿勢の癖や歪みがあっても、適切な身体との向き合い方を取り戻すことによって、苦痛の改善と共に、自分の身体に適った姿勢へと過不足なく変化していきます。そこには、矯正という治療手技は必要ありません。身体が求めている自分にとっての望ましい姿勢であれば、どんな姿勢であっても本来なら苦痛は伴わないもの。そこには、左右前後に均整のとれた姿勢の正しさは無関係なのです。

なぜなら、身体が求めている苦痛のない姿勢が「歪みのある悪い姿勢」であることも少なくないからです。自分にとっての最適な姿勢が、いわゆる「良い姿勢、理想的な姿勢」と一致するとは限らないのです。

自分らしい姿勢の答えは、身体が教えてくれています。それは痛みだけでなく、呼吸の状態や睡眠の質、気持ちの安定感などに現れているはずです。

必要なのは、身体に目を向けて姿勢を自己認識するという意識と感覚をもつこと。身体が望んでいる姿勢は、まさに百人百様。身体に適ったその姿は、唯一無二の素晴らしい個性といえるでしょう。

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